みかんぼの日記

日常のひとコマ。気付いたこと思ったこと。映画、本の感想など。

『だから荒野』(本)

桐野夏生 (著)
毎日新聞社
2013/10/8

(内容)
夫、子ども、家庭。自分にとってかけがえのない大切なものの筈なのに、どうしてこんなに毎日不愉快な思いばかりするのだろう。自分の誕生日に食事に来ているというのに、夫と子どもの口から出てくるのは自分を小馬鹿にした言葉ばかり。朋美は夫と子どもを店に残し、自由を求めてひとり車を走らせた。

(感想)

自分が日々なんとなく軽んじられている。不満は溜まるばかり。それが赤の他人だったら、納得は出来ないけどまだ仕方ないと思える。しかしそれが自分と同居している家族であるという事実。
この物語は気軽なプチ家出と位置付けられそうですが、朋美は咄嗟の決心であっても、もう二度と戻らないと家族への決別を心に誓っています。
朋美は逃亡先でそれなりに苦労をして、残された家族もそれなりに不自由な思いをしてみんな日々気持ちは揺れます。
そしてこの夫。ある意味爽快に思えるほど、妻への愛情が全く感じられない。あるのは世間体と被害者意識だけ。しかし彼が冷酷非情な悪人であるかというと全くそんなことはなく、彼は彼なりに悩み苦しみ、時折無邪気な可愛さも見せます。そう、この夫はごく普通の愚かな、どこにでもいる夫なのだと思います。
彼は、どんなに話し合っても、朋美が何故出て行きたくなったかは永遠にわからないに違いない。しかし全く悪気は無い。憎めないし、どこかユーモラスでもあります。こういう人もいるのでしょう。悪気が無いだけに本当に始末に負えないです。

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